協会報(~239号)

神図協この1年の動き /企画委員会

2012年3月23日 10時37分 [管理者]
特集:神図協1年の動き
「神図協1年の動き」2つの位置づけを持つ年に

企画委員長 横浜市中央図書館
 永 峯 浩 子

 2010年は「国民読書年」として位置づけられ、全国各地で、読書を推進するさまざまな催しが展開されました。読書は、いわば「知識の森」を探索するようなもので、目的や方法がひとりひとり異なる個人的な活動です。それを国家レベルで推進することは、決め手に乏しい、成果が見えにくい等の困難さを抱えていると言われてきたところですが、図書館は、日々訪れる利用者で活況を呈しており、2000年の「子ども読書年」に端を発し、各種法整備を経て10年以上も取組みが続いてきた意味を改めて考えさせられる一年でした。
 こうした中、電子書籍をめぐる動きも大きく進展した一年でした。年初は、限られた個人が特定の端末から限定的な情報を得ている状況でしたが、多機能端末iPadの発表を契機に市民の電子書籍への関心は一気に高まり、セミナーの開催や、デジタル雑誌の実証実験などさまざまな試みが行われ、年末までには、端末やコンテンツの多様化も進み、「電子書籍元年」と言われるに至りました。
 デジタル化費用127億円が計上され、図書約89万冊のデジタル化が進みました。戦前までの資料は順次著作権処理後インターネットで提供し、それ以外も館内で閲覧できるようにする計画と聞いています。
 こうした、2つの位置づけを持つ2010年、創立81年目を迎えた神図協は、伝統ある館種を超えた協力とともに、旬の知識や情報を提供する研修や広報などの活動を続けてきました。
 4月の総会時に講演した福原義春氏は、「書物は時代や世代を超えることができるものであり、その『知の連鎖』こそが図書館の持つ大きな役割」とした上で、「今の時代や未来の人類のための新しい図書館像の創造」への期待を述べられました。