協会報(~239号)

④「~事例から考える~「図書館の自由」」研修報告  

2012年3月23日 11時16分 [管理者]
研修会レポート④

「-事例から考える-「図書館の自由」」研修報告
(11月5日実施)
 
 


 平成22年度神奈川県図書館協会第6回職員研修会「-事例から考える-「図書館の自由」」に参加いたしました。
 研修は、日本図書館協会の山家篤夫先生の講義と、グループ討議・発表及び講評が3時間に渡り行われ、とても充実したものでした。
 講義では「図書館の自由に関する宣言」(1979年改定)の内容確認や、図書館の自由に関する過去の判例の説明についてお話いただき、図書館の自由についての基本的な考えを学ぶことができました。
 また、身近な図書館の自由についてのお話もあり、相模原市立図書館で実際に起こった事例を基に論議の背景や解説をしていただきました。
 特に興味深かったのは図書館での資料提供について検討した“「たくさんのふしぎ 2010年2月号」『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』という児童書の中に喫煙場面が数箇所あり、抗議を受けた出版社が図書館に対し回収依頼をした、対応するべきか。”という事例です。
 相模原市立図書館では、JLA の見解を参考に、回収には応じず閉架書庫に納め、利用者の要求により貸出可という対応を取っています。
 「図書館の収集した資料の思想・主張は、図書館が支持することを意味するのではない」ということ、「すべての国民は、図書館利用に公平な権利を持っており、いかなる差別もあってはならない」ということ、「表現の自由および知る権利は抑制されるべきものではない」ということを踏まえると、資料が回収されるべきものではないと考えられます。
 講義を聴き、この件の対応は図書館の自由を構成する3命題について問われるものであると改めて感じました。
 聴講後は、5つのグループに分かれ、図書館の自由について事例をもとに討議・発表を行い、山家先生から講評をいただきました。
 グループ討議は、書名の提示・伝言に関する事例、図書館利用の事実に関する事例、利用履歴の保存・開示に関する事例など、実際の業務で遭遇する身近な事例を基に行ったので、自館の状況に照らし合わせた活発な議論を交わす事ができました。
 今回の研修で学んだ事を業務に役立てていきたいと思います。

(相模原市立図書館 原 美紗江)