協会報(~239号)

フォーラム報告

2012年3月23日 10時54分 [管理者]
第12回図書館総合展報告

第12回図書館総合展 フォーラム報告
-待つ図書館から営業する図書館へ-
  

研修委員 神奈川県ライトセンター金井 恵美子

 平成22年11月24日.26日に行われました図書館総合展において、神奈川県図書館協会では25日に鳥取県立図書館の小林隆志先生をお招きし、講演会を開催いたしました。
 フォーラム開始に当たり、研修委員長より参加いただいた皆様へのご挨拶がありました。

■ご挨拶

 図書館協会の研修委員会では、各図書館員の資質向上を目的とし、1年間でおよそ11講座を予定しており、大変多くの参加者を得ています。
 その中でも、この「総合展」の研修には最も力を入れており、会員以外の方の参加もいただいています。いかに今回の講師にすばらしい魅力があったか、改めて喜んでおります。
 現在、図書館を取り巻く状況は、財政も厳しく、様々な課題を抱えていると思います。そのような中、図書館は生き残りを図るために、どのような取り組みをしていかなければならないかが、それぞれの図書館においても大きな問題となっていると思われます。本日の研修は大いに参考になるものと考えております。
 今回のフォーラムでは、小林先生が現在勤務されている、鳥取県立図書館において、実際に行われていることについてご紹介くださいました。
 「図書館というのは明らかに現場であり、利用者に対してなにを提供できているか、が全ての評価であり、理想や希望はいろいろあるが、実現できていなければ意味がない」という力強いお言葉から始まりました。
 また、「平成15年に、鳥取県の職員として図書館に勤務するようになり、まずは、ビジネス支援、医療・健康情報の提供、生活・困りごとの支援、県外図書館との交歓、刊行・展示の実施、就職資格取得支援と、様々な業務と関わって来た中で、図書館資料を活用して、どこまで、なにができるのかを考えて行かなければならないと思った。図書館員が、能力を発揮して、地域のためにできるサービスはなにか?」という昨年10月に発行されたメールマガジンへのご寄稿文より、本フォーラムに即した部分をご紹介くださいました。以下が講演の内容となります。

■講演要旨

 現在、人員や予算配分において、図書館は優遇されているとは言い難いと思いますが、そもそも、財政部署に対し、図書館についての理解を促す努力を、図書館側が行っているかどうか疑問です。
 また、市民に対しても、図書館の持つ社会的役割やサービスの可能性を正しく理解してもらう努力をしてきたでしょうか。
 全ての方に図書館の機能、必要性を知っていただかなくてはなりません。
 図書館を利用されている方々へのサービスはもちろん重要ですが、そればかりに目が行っていては不十分なのではないでしょうか。
 普段、書籍利用のみで図書館を利用されている方に対し、図書館のシステムや利用方法を知っていただくこと、更に必要なのは、現在図書館を利用していない方に対し、図書館の役割やサービスの可能性を広めていく、いわば、「図書館の営業」を考えていかなければなりません。
 その際、営業をする相手によって、その手段を変えて行くことも重要です。図書館側の都合で話を進めても興味を引き出すことにはなりません。
 さらに、提示すべき実績やサービスの内容は、地域によって異なり、地域のために図書館にできること、求められることを示していかなければなりません。これには正しい答えというものは存在しません。

  


フォーラムの様子  


 自己責任型の社会において、自らが損をしないような判断をするために、正しい知識や多くの情報が必要となってくる訳ですが、その際、図書館がどのような形で地域に役立つかを明らかにして行くことが求められていると思います。
 図書館は、居ながらにして、離れた場所に存在する情報を蓄積することができ、地方ほど図書館サービスが発達していなければなりません。
 自治体に向けても、日常の業務に必要な情報支援等ができることをアピールする必要があります。
 様々な部署に、図書館利用に慣れた職員が存在することで、自然に図書館の利用価値とその方法が広がっていくことが期待できる訳です。
 現在、鳥取県庁舎内には図書室が設けられており、業務に関してのレファレンスを気軽に受けられるということから、利用件数が伸びています。
 図書館員が行政に出向き、ビジネス支援という形で、図書館利用の利点を広めて行った結果だと考えます。
 教育現場においては、教職員を対象に、県立図書館職員が図書館活用法を話し、特別支援学級の教員向けには、関連書籍を研修会場に持参し、その場での貸し出しを行いました。貸出カードの作成や事務処理は撤収後に行えば済む問題で、それよりも、まずは実際に本を借りていただくということに重点をおきました。
 図書館が中心になってのイベントなども行っていますが、大きな会でなくとも、たとえば、地域の研修会に書籍持参で加わることもできるのではないでしょうか。
 事例としては、「鍍金技術研究会」に関連書籍を持参し、図書館としてのプレゼンテーションを入れることで営業活動になったのではないかと思います。
 忙しいはずの企業が、時間を作って開催する研修会だからこそ、より質の高い情報が求められており、図書館でそのような情報を提供できるということを理解してもらい、更に、その場で書籍の貸し出しを行うことで、図書館の有用性をアピールすることができます。
 このように、官民を問わず、積極的にアプローチすることで、図書館員と現場との顔つなぎをして来ました。
 その他、ツールの充実化や物流の円滑化といった整備を進めることで、必要とする人に必要な情報が届くシステムが広がって行きます。
 仕事や生活に役立つ情報を高いレベルで提供しつつ、他のサービスと同様に、あたりまえの図書館サービスとして利用者に認知されること、図書館が社会の中で必要な機能であるということが多くの人に認識されることが重要であり、それは、点ではなく「面」で行われて行かなければ意味がありません。図書館が、今までと違う、一歩進んだアプローチをすることがこれからの図書館を変えて行くことになるのではないでしょうか。


 当日は募集定員を上回る参加者を得、また、初の試みとして、インターネットによる配信が行われ盛況の内に無事終了いたしました。