協会報(~239号)

特集:神図協この1年の動き 大学図書館委員会

2012年6月10日 10時33分 [管理者]

特集:神図協この1年の動き

大学図書館委員会

委員長 東海大学付属図書館
  三井 悟
  

  大学図書館が提供する学術文献情報は、紙媒体が主流の時代から、近年のコンピュータ技術の進歩により、電子化が進み、オンライン上で利用できる商用データベース、電子ジャーナル、電子書籍等の電子リソースが急速に増大し、紙媒体と肩を並べる時代になった。また、昨今の大学図書館を取り巻く状況は、少子化による経営の逼迫、資料購入費の減少、学術雑誌価格の高騰、電子リソースを継続的に提供するために必要な莫大な予算確保、更に電子リソースの複雑な価格体系や契約形態等の課題が山積みである。一方、平成22年は電子書籍元年といわれ、出版社やメーカー、書店等が電子書籍事業へ参入し、市場も拡大している。
  そこで当委員会では、第1回委員会で、今期(平成23~24年度)の調査研究テーマを「電子書籍の提供について」と設定し、当委員会メンバーの各大学の電子リソースへの取り組みや課題、オンライン音楽配信サービス等の情報サービスについて検証した。第2回委員会では、電子リソースを契約・管理する業務について、各大学の状況や課題を協議した。第3回委員会では、費用対効果を上げるためのサービス展開等の調査活動を予定。
  大学図書館にとって電子書籍は、管理・運用面では、書庫狭隘化の解消と書庫スペースが不要。貸出管理業務の軽減。本が紛失・汚損・劣化しない。複数の図書館で共用できる。受入、登録、整理等の作業が短時間で済む。利用面では、図書館に来館しなくても、閉館時間を過ぎても本が利用できる。本の内容が検索できるなどのメリットがある。一方、資産登録しないので蔵書数に表れない。価格が高い。使い勝手の面では、一度に複数の本やページの見比べが難しいことや、OPACに反映していないと効率的な検索ができないなど、操作性向上の必要性も明らかになってきた。
  電子ジャーナルは図書館資料として定着しているが、電子書籍化されている本は少なく、電子書籍はまだ発展途上でもある。今後、大学図書館は、紙媒体と電子書籍の収書方針を明確にし、利用者のニーズにどこまで対応し、どのような利用環境を作り、サービスを展開していけばよいのかを2年間の調査研究活動の中で探っていきたい。