No.198(特集:不況を乗り越える図書館運営)
2012年3月29日 10時42分 [管理者]目次(特集:不況を乗り越える図書館運営) | |
図書館再編と資料の有効活用 神奈川県立川崎図書館 森谷 芳浩 | |
県立図書館のこの10年。ひとことで言えば、「予算はどこに消えた?」といったところだろうか。県立川崎に限ってみても今年度の資料費は最高時(91年度)の約1/2に迫ろうとしている。こうした流れにあって、少しでも資料を充実させようとすれば、思いつくのはやはり寄贈である。そこで最近の事例を紹介しながら、当館の現況を報告したい。 企業の資料室からの寄贈 当館は、企業の資料室等が会員の中心となっている「神奈川県資料室研究会」という団体の事務局を担当している。会員機関とは様々な情報交換ができる関係にあり、寄贈の申し入れも時折受けている。以前は単に不要な資料の処分といった事情からであったが、近年は情勢の変化がみられる。昨今の経済状況、また情報の電子化への進展等から、資料室の統合、移転、廃止など大がかりな再編が行われ、かなりの資料を放出せざるを得ない場合がでてきているのである。そこで、あらかじめ噂のあるところに声をかけておき(不吉?)、いざという時の選択肢として当館への寄贈を依頼している。こうした積極的な働きかけにより、すでに数社から重複を除き、数百冊単位の資料(雑誌を含む)を受け入れている。 (社)日本化学会からの寄贈 今年の6月、(社)日本化学会(わが国最大の化学学会)から洋雑誌約140タイトル、洋図書約800冊等(同図書室が所蔵している紙資料ほぼ全てである)が寄贈された。やはり同学会の図書室再編によるもので、実現に至ったのは、同会図書室と当館の両方を利用されている方の情報に基づき、即座にアプローチをしたことによる。単なる寄贈と違うのは、同会会員が利用する際の配慮、独立したスペース、一部の雑誌については引き続き当館で受け入れるなど、以前の機能をある程度継続的に保つ点であった。専門分野に詳しい利用者に使われていた資料群であり、まとめて受け入れる価値は大きい。 資料を生かす道 平成10年度のリニューアルにより、当館は地域図書館的機能を廃し、科学・産業技術系の図書館に特化した。このことは、限られた予算をより有効に使うだけでなく、専門性の高い資料を収集するため、上記のような寄贈にも積極的に取り組む契機となっている。受け入れる資料は最新のものばかりではないが、デポジットへの関心も高まりつつある。他機関との連携により、科学技術系の資料への多様なニーズ(電子化資料ばかりでなく)がカバーできれば良いと思う。 | |