協会報(~239号)

No.199(特集:県内図書館1年の動き)

2012年3月29日 10時54分 [管理者]
目次(特集:県内図書館1年の動き)
  • 図書館界と県内図書館事情 ・・・・・(1)
   神図協各委員会の活動
  • 協会ホームページにより情報を発信(広報委員会) ・・・(2) 
  • 職員スキルアップ中(研修委員会) ・・・(3)  
  • コンソーシアムを考える(大学図書館委員会) ・・・(4)
  • 資料保存スペースの獲得を目指して(デポジット・ライブラリー推進特別委員会 ・・・(5)    
  • 小さなボーダーレス化に向けて(県内全域利用推進特別委員会) ・・・(6)
   今年度の新しい動き
  • ITコーナーの開設と運営 -インターネットの利用環境を整える- ・・・(7)
  • 市民向け情報探索サービス ・・・(8)
  • 駅設置の図書返却ポスト ・・・(9)
  • 市民ボランティアによる宅配サービス ・・・(10)
  • まごころこめて、てきぱきと ・・・(11)
   図書館だより 2001年総集編(2001年3月~2002年2月)
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図書館界と県内図書館事情
   
   神奈川県図書館協会事務局長 池田政弘
 長引く不況、それに伴い地方自治体の厳しい財政状況のために、公共図書館はいずこも厳しい運営を強いられている。このような時期に図書館の職能団体である「日本図書館協会」では永く理事長の職にあった栗原均氏が辞し、元図書館情報大学副学長であった竹内悊氏が新しく理事長に就任した。  

1. 日本図書館協会の今
   竹内理事長のもと、協会のさまざまな懸念を払拭し、かつさまざまな根本的改革をなすべく、その歩みが進められている。特に、日本図書館協会の活性化を如何にするか、そのための組織運営はどうあるべきか、さらに協会財政の健全化をはかっていくには何をなすべきなのか等課題解決の道をさぐっている。これらは、いずれも協会内部の問題ではあるが、一歩協会外いわば日本の図書館全体に目を転じてみよう。
   昭和25(1950)年図書館法が制定され、その18条に基づいて、文部省は公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準を大臣告示することになっていた。しかし実際には告示されることなく50年が経過し、ようやく平成13年になって文部科学省告示第132号(7月18日)が提示された。この「基準」の趣旨として、1.公立図書館の健全な発展に資することを目的とする 2.公立図書館の設置者は、この基準に基づき同法(図書館法)3条に掲げる事項などの図書館サービスの実施に努めなければならないとしている。しかしながらそれぞれの具体化に際して、数値目標が掲げられていないために、それぞれの設置自治体の責任に転化されており、設置者は困惑せざるを得ない状況となっている。
   また、日本の図書館界をリードしてきた東京都による図書館政策、とりわけ都立図書館のあり方が根本的に見直しがはかられ、その検討結果が「東京都立図書館のあり方」として平成14年1月に発表された。もともと中間まとめが7月に報告され、新聞紙上には「同じ本は都立3図書館で1冊、14万冊リストラ、効率だけ重視、利用者軽視」(毎日新聞平成12年12月11日)と掲載されていた。検討された内容には図書館界にとって厳しい方向が感じられた。そのため東京三多摩地区の図書館員の有志によって縮小反対の運動が起ったりした。
   このような状況のなかで、日本図書館協会が社会的使命としての「図書館の職能団体」としての性格を持ち、国民の文化的基盤としての「図書館のナショナルセンター」の役割を担っているとすれば、国民の知る自由を保障するという図書館のひとつの機能を考えると、日本図書館協会の果たす役割と期待は大きなものがあるのは自明の理であろう。
   いずれにしても、日本図書館協会の発展は今日の図書館活動のよりどころとなり、国民の情報リテラシーの涵養と生涯学習機関としての図書館の発展の一つの原動力となるものである。

   

2. 神奈川の状況
  神奈川県には、昭和3(1928)年に設立された神奈川県図書館協会がある。同協会は21世紀を迎えるにあたり、委員会活動の大幅な見直しの検討を経て、新体制のなかで、活動を展開しつつある。この委員会活動は、協会活動の根幹をなすものであり、多くの委員(図書館員)の方々の努力によって、図書館職員の質的向上に大きな成果をもたらしているところである。今年度の活動内容は別載のとおりである。
   このような流れのなかで、県内図書館事情についてふれて見たい。

   

(1)紛失図書について
   どこの図書館も利用者を信じ、使いやすい図書館をめざして図書館の運営を行っているところであるが、今日、図書館は便利と管理のはざまで苦悩している。特に朝日新聞の天声人語欄に鳥取県立図書館が10年間で6400冊の図書が紛失し図書館長が文書訓告処分を受けたという記事(平成13年8月30日)が掲載されたのをきっかけに亡失図書に関して大きな反響がまき起った。県内においても「ホント困る!無断持ち出し1万7000冊」(神奈川新聞平成13年12月19日)と載り、どこの図書館も亡失図書の悩みをかかえ、厳しい財政下に莫大な費用をかけて盗難防止装置の設置などの動きも出てきている。盗難、亡失、その他図書の損耗に関する問題は、今日突如生来したものではなく、これまでの図書館の歴史で常に問題視されてきたことであるが、今日的な状況の中で改めてその対応・対策が必須となってきたのでもあろう。利用者のモラルを問いたいところである。
   
   (2) 図書館・出版社・プライバシー 
   日本経済の低迷のなかで出版界からは個人が新刊を買わない理由の一つに図書館による貸出があるといい、利用者のリクエストに応じた図書館の本の購入に異議を唱える声が大きくなってきた。「図書館は無料貸本屋か」などと批判が出ている。これまた古くて新しい問題である。図書館側では公立図書館の資料費は約350億円(日本の図書館2000年版より)で全出版物の約1.5%未満であると言って図書の利用が新刊購入に影響を及ぼしているとは思えないとの考えを示しているが、これらは著作権とも密接にからまる問題であり、円満な解決法を見い出し、図書館と出版社の共存共栄を考えてほしいところである。
   また、図書館の資料提供のなかで、名誉毀損やプライバシー保護の問題がクローズアップされてきている。が、どのように対応していくか図書館員として多くの課題も背負っている。(参考「図書館雑誌」2002年1月号)
   いずれにしても、図書館員として「図書館とは」と原点に帰って考えなければならない問題であろう。
   
   (3)厳しい労働環境に
   ところで、図書館が社会教育施設あるいは生涯学習施設であるところから、最近では「コンビニ」並みの開館日数が求められ、県内の自治体のなかでは図書館年中無休体制(年末年始除く)が多くなりつつある。また年中無休までいかないまでも祝日を開館するとともに翌日も開館する図書館が多くなっている。県内図書館の今年度の特徴的現象である。利用者の利便は増加すること自体は喜ばしいことであろうがそれだけ、図書館で働く職員の負担が多くなり、ますます厳しい財政とともに、厳しい労働条件のもとに働く状況となりつつあるのではないだろうか。場当たり的な条件整備のないコンビニ化はトータルにみてプラスにはならないのではないだろうか。

   

3 おわりに―明るい展望-
  しかし、図書館にとって、明るい活動もある年であった。
   この厳しい財政状況にあって、相模原市では9月に3つ目の図書館として橋本図書館が開館した。この図書館は「マルチメディア情報センター」としての役割も持ち、さまざまな機器が設置されている。
   図書館のIT革命化が進むなかで、横須賀市ではICチップを使う未来型図書館の建設構想(神奈川新聞平成14年1月22日)が実現にむけて動き出した。また川崎市においても、川崎市中央図書館構想が具体化へ一歩踏み出している。さらに真鶴町においても図書館・情報館建設の動きがある。これからの神奈川の図書館の発展の夢をいだかせる明るい課題である。
   将来への展望をはかりながらかつ、そこでまた新たに生ずる問題点の解決をあわせてはかっていく必要がある。何にせよ図書館がまだまだ右上がりの成長をとげる余地と必要があり利用者と共に期待をつないでいきたいものである。
  (平成14年2月記) 

(更新:2012年4月19日 15時37分)
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